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庭のあれこれ

理想的剪定法(CODIT理論)

  CODIT理論とは、アメリカのAlex L.Shigoという樹木生理学者が提唱したCompartmentarization Of Decay In Trees(樹木腐朽の区画化)の略称です。

樹木は、切断などの傷を受けると、その傷口から内部の組織が腐朽するのを防ぐために「防護壁」を作る働きがあります。防護壁の外側は腐朽菌に侵され枯れてゆきますが、この防護壁によって、内側の組織は守られるのです。
樹木には、上記の「区画化」の働きが部位によって強い所と弱い所があります。この働きの強い所で剪定すれば、切り口は守られ、腐朽が内部まで進行するのを防ぐことができるのです。
では、それはどこでしょう?

樹木の枝図 庭木をじっくりご覧ください。
幹と枝の分岐点の股の部分には「しわ」のようなものがあります。(図D) 
また枝の付け根には微かな盛り上がりがあります。(図C)
この「しわ」と「盛り上がり」を傷つけないで出来るだけ接近したライン(A→B)、このラインが強い区画化の部分なのです。

 このラインで切断するためには、まず【1】で「受け」を切り、【2】で大部分の枝を下ろします。枝の重みで樹皮が裂けるのを防ぐためです。そして最後にA→Bを通る【3】のラインを注意深く切断します。

ためしに庭木の枯枝を探してください。
このラインまで枝は枯れ下がり、生木の部分が盛り上がっているのが確認できると思います。

樹木は切断された傷口をふさごうと、かさぶたのように樹皮を巻いてきます。このかさぶたをカルスといいます。
理想的ラインで切断された枝は、均等にカルスが巻いて、傷口がきれいにふさがります。
そうでないラインで切断された枝は、区画化の働きを持つ細胞のあるところまで枯れ下がります。そしてこの枯枝がカルス形成の邪魔をするため、腐朽は幹の内部にまで進行してしまいます。樹木の空洞はこのようにして出来るのです。

幹と枝のこの関係は、枝と枝、枝と葉、枝と芽の関係にもそのまま当てはまります。
枝のあるところ、葉のあるところ、芽のあるところで鋏むのが剪定の基本です。
そしてそのとき水平に切るのではなく、内側へやや斜めに切るのが肝要です。
ここにも小さなCODITがあるからです。

(参考文献 『現代の樹木医学 要約版』 日本樹木医会 1996年)

 

 

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字寺ノ下46−1