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庭のあれこれ

庭づくりは、土づくりから

 


  よいお庭を作るために、もっとも大切なことの一つに、土づくりがあります。
  植物が健全に生育していくためには、植物に適した土作りをすることが必須の条件となります。
  植物を植えてしまった後に土壌を改良するとなると、大変な労力と手間がかかります。
   最悪の場合、庭木をすべて掘り出して、土を入れ替えることになってしまいます。
  ですから、庭づくりをする前、新築の場合は、できれば家を建てられる前から、土壌について考えた計画を立てておくことが大切になります。

 一昔前の住宅は、昔から平地だった地面に特に手を加えずそのまま建てていたものが多かったため、土についてそれほど考慮する必要はありませんでした。
  なぜなら、こういう地面は、岩石層、砂質層、その上に土があるという自然界の地盤構成そのままになっているからです。
  ですが、今では、山を切り崩して作られた大規模開発された住宅地であったり、平地であっても人工的に造成された地盤がほとんどで、手を加えられていない場合の方が少なくなっています。
  こうして作られた人口造成地の土壌は、住宅にとっては良くても、植物にとっては「劣悪」と言っていいほどの状態にあることが多いです。
  もちろん、それには理由があって、構造物を上に作るためと、植物を植えるためでは、必要とされる地盤・土壌そのものが違ってくるからです。
  構造物などの場合は、安定した、変化しない、固く締まる土壌が「よい地盤」です。
  一方で、植物にとってこのような土壌は、生育にまったく適していません。植物は、土の粒子と粒子の間に空気が入っているような、ある程度の柔らかさをもつ土壌を必要としてるのです。

 山を切り崩して作られた住宅地の場合です。
  いわきニュータウンや、泉ヶ丘ハイタウン等のニュータウンで典型的に見られますが、これらのニュータウンは、平地を出来るだけ確保するため山を削る際に栄養分の豊富な表土層をまるっきり取り、植物が生育することが不可能な岩盤層まで掘り進めます。
  しかし、岩盤層は植物が生育することができませんし、またその上に土を載せても、暗渠排水などがきちんとされていなければ、、岩盤層の上で水が滞留、腐敗し、根腐れを起こす原因となってしまいます。
  重機の発達により、より深い掘削が可能となった比較的最近つくられたニュータウンの方が、この現象は顕著になっています

 こうした岩盤層の上に庭を作る場合には、植栽する部分の土の深さを充分に取ることが必要となります。
  どれくらい必要かといいますと、今、人気がある落葉樹の高木が十分に成長するには、80cm以上の深さが必要だとされています。
  しかも、上に書いたように、ただ岩盤の上に土を載せるだけでは、排水がきちんとできませんので、暗渠排水の処理をきちんとした上に、植物が生育するのに適した土壌を入れることが必要となります。

 開発された集合住宅地を造成する際に客土される土の質も大きな問題です。
  住宅の建てられる場所に入れられる土は、ほとんどの場合「締まる」土です。
  いわきでは、阿武隈高地近辺に花崗岩が風化した真砂土土壌があることから、真砂土などを客土することが多いです。
  しかし、「締まる」という性質は、植物にとっては大敵です。
  植物の根の発達を妨けるため、植物は育ちにくく、時間が経過すると共に「締まり」が増してくるため、植栽後数年経たときに、かなり状態が悪くなってしまいます。

 こういう場合、客土される土をあらかじめ、植物が生育するのに適したものに指定しておけば、ふたたび土壌を入れ直したり、土壌改良する手間がなくなります。
  ただ、庭を作る際に「山砂」をいれてもらった、と言われるお客様の庭の土壌を掘ってみると、深さが2〜30cmしかなかったり、「山砂」は山砂でも、花崗岩の風化した「真砂土」であったりすることがあります。
  一概に「山砂」と言っても、その土の採れる場所、採った深さによって、植栽に適した土、適していない土があります。
  腐葉土混じりの表層に近い「山砂」と、岩盤に近い「山砂」では全く別物です。
  真砂土も山砂には違いありませんが、3割程度はバーク堆肥等の肥料分をいれ、肥料分を増やすと共に、締まりを抑えなければ、植物は徐々に弱っていってしまいます。
  また、深さについても、表土から80cm以上は欲しいところです。
 
  庭を作って直後は植物の状態がよかったけれど、数年経つうちに、全体的に調子が悪くなってきた、というような場合は、ほとんどこうした土の問題が絡んでいます。
  庭木の調子が悪いときに「水をあまりやらないから…」と言われる方がとても多いのですが、通常の地植えにされている木は、土づくりさえきちんとされ
ていれば、植栽後3年以上経つ頃には、盛夏期の日照りが続くような時を除いて、特に水遣りは必要はないものです。(特殊な樹種は除きます。)
  極端な言い方をすると、土さえきちんとできていれば、都市部でも植物は実生などで勝手に生えてくるものです。それを選んで、草を刈って、時には場所を移し、管理しながら育ててあげれば、10年も経てば、かなり庭らしくすることもできます。
  逆に、土が悪ければ、庭を作った直後は良くても、後は悪くなる一方になってしまいます。

 庭づくりは、まず土づくりから、です。

 

 ●関連項目:「いわきに多い梢端枯れ」

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字寺ノ下46−1