美しい空間と時間 庭園管理植吉
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植木屋雑記帳

 

■ツバキとサザンカ

  サザンカの花びらがちるちる。花はしっとりと濡れている。暗い地面に色が散る。北風。ヤッケのフードを被り、サザンカの枝を振る。つっかかりは植木屋の恥。頭から花びらと花粉を浴びる。
ツバキとサザンカは花の落ち方で区別がつく。ツバキは首からぽとりと落ちる。サザンカは花弁がはらはらと散る。
首から落ちるので昔の侍は庭に椿を植えるのを嫌ったそうだ。いまはチャドクガが付くので植木屋が嫌う。洋名カメリア。和洋ともたくさんの品種がある。
植木屋をはじめて間もない頃、ツバキの花むしりをやらされた。やわらかい色を惜しげもなくむしり取る。たちまち周りが花の海になる。地下足袋履いた30男が塀に登って花に触れ、花を握り、花を散らして恍惚となっていた。

 (註)チャドクガ。
仲間内ではツバキ虫と呼んでいる。毒毛があり、触るとジンマシンのようになる。ひどい者は一週間ほど入院する。葉裏にびっしりと並んで喰害し、葉脈だけ にして移動する。一度、一個中隊が一糸乱れず幹を移動しているのに出会った。脱皮した後の抜殻でも、残った毒毛でやられる。ツバキ、サザンカ、茶、シャラ (ナツツバキ)につく。知らぬものはない植木屋の天敵だが、慣れれば一晩でかゆみは失せる。

 

 

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14