美しい空間と時間 庭園管理植吉
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植木屋雑記帳

 

■樹心

 荒れるという天気も昼間はさほどでなかった。
 小雨がヤッケを濡らすなか、残った丸太割に精を出した。
 ほとんどがヒマラヤ杉や松だったが、中にはサクラも混じっていた。
 樹種によって木肉の色や質が違う。
 枝葉の付き方、花の咲き方、実の成り方、全く違うのだから当たり前だが、不思議な気がする。
 薪材にも大空に広げた時空があり、蓄積された出来事がある。
 白く息を吐きながら、斧やハンマーを振るっていると、次第に違う次元に入ってゆく。
 割れてゆく薪が何か異質な物、初めて見る異様な物に見えてくる。
 久しぶりに味わうメタの感覚。
 日の様々な階層の焦点が合わないと表れてこない。
 ここが樹心なのだな。
 ここに振り下ろせばいいのだな。
 ぱかりと存在が割れて日が香る。
 そのことだけを焦点にする。

 

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14