樹心
荒れるという天気も昼間はさほどでなかった。 小雨がヤッケを濡らすなか、残った丸太割に精を出した。 ほとんどがヒマラヤ杉や松だったが、中にはサクラも混じっていた。 樹種によって木肉の色や質が違う。 枝葉の付き方、花の咲き方、実の成り方、全く違うのだから当たり前だが、不思議な気がする。 薪材にも大空に広げた時空があり、蓄積された出来事がある。 白く息を吐きながら、斧やハンマーを振るっていると、次第に違う次元に入ってゆく。 割れてゆく薪が何か異質な物、初めて見る異様な物に見えてくる。 久しぶりに味わうメタの感覚。 日の様々な階層の焦点が合わないと表れてこない。 ここが樹心なのだな。 ここに振り下ろせばいいのだな。 ぱかりと存在が割れて日が香る。 そのことだけを焦点にする。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14