美しい空間と時間 庭園管理植吉
ライン
植木屋雑記帳

 

■浜風

山の向こうは大雪だそうだ。
こちらは海に時折陽が差してカモメが浮かんでいる。
久しぶりに埠頭の水族館で仕事。
浜風が冷たい。
芝山にいざって草を引いた。
小鎌を爪のように立てて、かじかんだ草を引く。
日がな一日。
どこかにこんな動物がいたな、と思う。
日陰の芝土は凍っている。

真冬の刃物研ぎは辛かった、と、以前仕事に来ていた大工さんが言った。
兄弟子たちは湯で研ぐのだが、小僧の自分は真水で研ぎをやらされた。
研ぐうちに水が凍り、指が砥石に吸い付いた。
血がにじむので、おざなりにすると、兄弟子が研ぎ具合を確かめて、殴った。

そんな話を思い出した。
そうして叩き込まれた職も今は仕事がなく、造園の手伝いで糊口を凌いでいる。
そんな大工が日本中にたくさんいる。

腰を伸ばすと向こうの木立に雀がたくさん群れていた。
近づくと雀は模様のように飛んで浜風に揺れた。

 

line
 →植木屋雑記帳一覧 →このページのトップへ →次の項目を読む

庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14