浜風
山の向こうは大雪だそうだ。 こちらは海に時折陽が差してカモメが浮かんでいる。 久しぶりに埠頭の水族館で仕事。 浜風が冷たい。 芝山にいざって草を引いた。 小鎌を爪のように立てて、かじかんだ草を引く。 日がな一日。 どこかにこんな動物がいたな、と思う。 日陰の芝土は凍っている。
真冬の刃物研ぎは辛かった、と、以前仕事に来ていた大工さんが言った。 兄弟子たちは湯で研ぐのだが、小僧の自分は真水で研ぎをやらされた。 研ぐうちに水が凍り、指が砥石に吸い付いた。 血がにじむので、おざなりにすると、兄弟子が研ぎ具合を確かめて、殴った。 そんな話を思い出した。 そうして叩き込まれた職も今は仕事がなく、造園の手伝いで糊口を凌いでいる。 そんな大工が日本中にたくさんいる。
腰を伸ばすと向こうの木立に雀がたくさん群れていた。 近づくと雀は模様のように飛んで浜風に揺れた。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14