雨猫
いつもは通過する枝道に入って、ぼんやり山の中を走っていると、思いがけなく風景が開け、集落が見えてくることがある。 さらにその集落を抜け、杉檜林や雑木林を縫って行ったどん詰まりに、人家がぽつりと一軒あることがある。 それは今はほとんど空き家になっているが、周りに自家用の田畑があり、裏山から引いた水樋があり、池があり、牛山羊を飼った小屋がある。 そんなところで呆けたように、そこでの暮らしを想像するのが好きだ。 冬の雪掻き、夏の草刈り、春の植え付け、秋の収穫、 もちろんその暮らしが成り立たなくて、この家の持ち主はここを捨てたのだろううけれど。 雨が続く。 猫が窓辺で雨をみている。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14