美しい空間と時間 庭園管理植吉
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植木屋雑記帳

 

■キリギリス

 オニヤンマが、昼食中のテーブルの上に音もなく現れて、しばらく空中に
停止していた。
 これはこれは、と見ているうちに、また「ツィ」と線を引くように去った。
 残された場所が、寂しいような気がした。
 薪ストーブの煙突のスス掃除をしていると、漆喰色に変色した蛙が跳びだ
した。
 高い場所から身を投げ出したので、長いあいだ手足を開いて落ちていった。
 そんな中空を、これから艶やかな女郎蜘蛛が巣を張り、地震のように小刻
みに揺らしてゆく。
 そして真夏の石の上を高速で動いていたビロード色のトカゲも、どこかの
隙間に身を隠してゆく。

 つい、っい、つい、と秋が遷(うつ)る。

 障子戸で「チョンッ、ギー、ギー!」とキリギリスが鳴いて、夜中、何か
の夢見から叩き起こされた。
 捕まえて便所の窓から放つと、草の露が月に光っていた。

 

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庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14