ざ、ざ、ざ、
今日は山の沢に竹を切り出しに行った。 沢の源流沿いに竹はのんのんと伸び、北風に揺れてこすれて乾いた音を立てていた。
斜面を下り、根本に鋸を入れると、ゆっくり竹は傾く。 大抵は周りに立った竹に枝葉が寄りかかって降りてこない。 切断した根本を抱えて渓を引く。 竹は、ざ、ざ、ざ、と音を立て、空を斜めに落ちて行く。 ふわりと青いものが地面にさわる。
それから魚を捌くように枝葉を払ってゆく。 竹はひと節毎に枝葉を対角線に付ける。 生え際に下からノコを入れ、上から払うと枝葉は簡単に落ちる。 そうして必要な太さの分だけ枝を払い、細い梢の部分は切り離す。
ざ、ざ、ざ、 ざ、ざ、ざ、と青いものが抜かれ、 ふわりと地に寝る。 他に音はない。
身毒が消え、いくらでも澄んでゆく気がする。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14