百年椛
樹齢百年というモミジの枝抜き手入れ。 新しい足袋、新しいノコで、百翁の幹肌にかじり付いた。 枝から枝へ身の重心を移動し、ノコを入れる。 どんなに細い枝先でも、根元からの力の流れを違えなければ、折れて墜落することはない。 木が天空へ伸びた力に自分の重心を沿わせ、身を預ける。 幹枝に添い、根元から太陽へ向けての放射を見取ると、その描線を乱した枝が見えてくる。 乱れた線の分かれ目から斜めにノコを入れ枝を離す。 枝元を下にして落とすと、途中の幹枝に掛からないで、するりと抜けてゆく。 百歳翁も枝先は若々しい。 緑色の枝が新しい空を掻いている。 大枝を揺すると、こぼれ残りの種たちが、プロペラのように回って一面祝祭のように落ちていった。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14