ルリビタキ
庭で薪を割っていると、視界の隅で朱と瑠璃が混じるように交差した。 ジョウビタキとルリビタキが縄張りを争ったようだった。 瑠璃が敗れ、クルマの窓に当たって落ちた。 しばらく動かないので近寄って手に取ってみた。 あまりに軽いぬくもり。 気が付くと指にべっとり血が付いた。 右目の辺りをやられたらしい。 人と同じ血の色。 ルリはふとした隙に手を離れ、部屋の中を飛び回った。 家猫にやられないように、妻とふたりで椅子を持ち出して追いかけた。 見失って諦めかけた時、スキャナの上の鴨居に糞をして留まっていた。 もう一度そっと手に包む。 ここまで幾年か生き続けてきた小さなものの質感が、身体に波紋する。 この身体で小枝を渡り、地面を探し、さらに小さなものの命を捕ってきたのだろう。 空に放すと瑠璃色のものは、過たず山の方へ消えていった。 初めて見るような美しい曲線だった。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14