一年
脚立を立て替えるため松の樹冠から下りると、日陰にまだ霜が残っている。 霜で縁取られた草は美しいな。 色んなものを眠らせて、色だけを際だたせている。 一年ぶりに手入れに入るから、同じもの、変わったもの、定点観測のようだ。
時の流れ。 風景の質が明らかに変わって見える。 風景の質。 降り積もった時間の層が何かを変えている。 去年の手入れの鋏跡を見ながら、今年伸びた松葉を摘んでゆく。 毎年、毎年、同じ事をしながら、同じ事をしている自分を見つめる。
お客さんにも一年の変容。 家族を失ったり、巣立ってあらたな命を得たり。
「子、川の辺にあって、曰く、逝くものは斯くの如きか、昼夜をおかず」
老・孔子の佇まいが、その息吹が聞こえてくる。 そしてまた、水に流されながらも、その岸に佇み、詠嘆する「場所」が、 人間にあることの不可思議を思う。
よいお年を。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14