ヤマボウシとシャクナゲ
わたしの家には眠るひとがいるよ。 猫と一緒にいつまでもいつまでも眠っているよ。 わたしはひとりで身支度し、外へ出て行く。 わたしの仕事は土を掘り、木を植えること。 スコップひとつでどんな穴でも掘るよ。 穴を掘ることは好きです。 土にまみれることは好きです。 土は星と時間のかけらです。 わたしは星と時間にまみれます。 きょうは海辺のまちに行ったよ。 家がみんな壊れていたよ。 わたしの作った庭も壊れていた。 海がふくらんでみんな流された。 木も石も流された。 残った土留め石を何個かひろってきたよ。 山の中に何億年も眠っていた石。 ここまで運んでここで海をみました。 家に帰ると猫だけがいたよ。 眠るひとはいなかった。 わたしは植木畑の手入れをしたよ。 雨ごとに伸びた枝葉でもう緑の回廊です。 葉陰の暮れ空の向こうに月が霞んでいた。 ヤマボウシが薄みどりの花をつけていたよ。 シャクナゲが緋色の花を揺らしていました。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14