雪の後
きのうの午後、丘の上で腐葉土を掻き集めている時に、 雪が降り出した。 雪は瞬く間に村中を包み込んだ。 放り出されたカブトムシの幼虫の脚がもがいていた。 そこにも雪が降り積もった。
雪は無音を重ね降り積もった。 丘の上からは、谷間の景の三分の二は空だ。 空と集落、 それをただ雪が繋いだ。 カブトムシは死ぬだろう。 今日は、震災の三日前に港の寺に植えた桜の手入れに行った。 枯れた枝を下ろし、根鉢を掘って肥料をやった。 根腐れしているかと思ったが、細根が出ていた。 か細い根の一本一本が、あれからの月日だった。 海が光っていた。 またあちこちで道路の補修工事が始まった。 いつだったか片腕の土工を見たことがある。 誰よりも機敏に動き、片手で上手にスコップを使っていた。 それは路上の舞踏のようだった。 年明け一気に仕事が薄くなった。 毎日薪割りや片付けをしている。 夏に伐採したミズナラの木を割ると、 シロスジカミキリの成虫がたくさん出てきた。 さんざん食い荒らして、結局外へ出ないまま、 エイリアンのように眠っている。
庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14