美しい空間と時間 庭園管理植吉
ライン
植木屋雑記帳

 

■  雪の後  

きのうの午後、丘の上で腐葉土を掻き集めている時に、
雪が降り出した。
雪は瞬く間に村中を包み込んだ。
放り出されたカブトムシの幼虫の脚がもがいていた。
そこにも雪が降り積もった。

雪は無音を重ね降り積もった。
丘の上からは、谷間の景の三分の二は空だ。
空と集落、
それをただ雪が繋いだ。
カブトムシは死ぬだろう。

今日は、震災の三日前に港の寺に植えた桜の手入れに行った。
枯れた枝を下ろし、根鉢を掘って肥料をやった。
根腐れしているかと思ったが、細根が出ていた。
か細い根の一本一本が、あれからの月日だった。
海が光っていた。

またあちこちで道路の補修工事が始まった。
いつだったか片腕の土工を見たことがある。
誰よりも機敏に動き、片手で上手にスコップを使っていた。
それは路上の舞踏のようだった。

年明け一気に仕事が薄くなった。
毎日薪割りや片付けをしている。
夏に伐採したミズナラの木を割ると、
シロスジカミキリの成虫がたくさん出てきた。
さんざん食い荒らして、結局外へ出ないまま、
エイリアンのように眠っている。

 

line
 →植木屋雑記帳一覧 →このページのトップへ →次の項目を読む

庭園管理 植吉 代表者 鎌田吉一 福島県いわき市田人町黒田字唐沢14